浄土真宗における法名軸と過去帳について(家族葬・お葬式・葬儀・まるいち・京都)
浄土真宗における法名軸とは、位牌の代わりに仏壇に掛ける掛け軸のことです。
法名軸には、故人の法名(浄土真宗で死後に与えられる名前)、俗名(生前の名前)、死亡年月日、享年などが記されます。手次寺(他宗派における菩提寺)または仏壇店で買い求め、その後手次寺で祈祷を行いお仏壇に飾ります。小型のお仏壇のため、お仏壇の内部に法名軸が掛けられないご家庭については法名軸を用いず、過去帳のみを使用する場合もあります。
●浄土真宗の考え
浄土真宗では故人は亡くなると仏弟子として法名を授かり浄土へ導かれるとされていることから、法名軸は本尊・脇侍に近い位置へ置かれています。なお、平常時はお仏壇の内部に掛けておきますが、盂蘭盆会などにはお仏壇から出して掛けておく場合もあります。
※真宗高田派や一部地域によっては位牌を用いているところもあり、浄土真宗系の宗派や慣習によって荘厳形式が異なる場合もあります。
●浄土真宗はなぜ位牌がないのか?
浄土真宗以外の他宗派では、故人の象徴とする位牌をお仏壇に安置することがほとんどですが、浄土真宗では位牌は置かずに過去帳や法名軸を用います。
亡くなった直後は白木の仮位牌を置くものの、四十九日後に本位牌を改めて作ることはありません。これは浄土真宗の教えに基づいており、故人は現世にとどまることなくすぐに浄土で仏となると考えられているためです。
●法名と戒名の違い
浄土真宗では亡くなった方に授けられる名前を戒名ではなく、法名や法号としています。戒名が戒律を守り仏門に入る者に対して贈られる名に対して、法名は仏の教えを守り、仏弟子となる者に贈られる名を意味しています。
●法名軸の書き方
法名軸に法名を書き写すことは仏壇店でも依頼できますが、なるべくは手次寺(菩提寺)にお願いしたほうがよいでしょう。タイミングとしては四十九日までに法名軸を購入し、住職に依頼します。
その際、過去帳も持参して法名軸と合わせて法名を書き写して表装しますが、院号を本山から授与されている場合は、いただいた「院号法名」の本紙を法名軸に表装します。
掛ける位置は、お仏壇に向かって右側に直近に亡くなった方やご両親の法名軸を、左側には一族の法名を書き写した「総法名軸」を掛ける場合が多いようです。
※法名の記載、表装を仏壇店に依頼する場合は早くても1週間、場合によって1ヶ月前後はかかります。なるべく早めに手次寺(菩提寺)や仏壇店に相談し、依頼を行うことをおすすめします。
●法名軸の種類・形状
白紙に「金襴(きんらん)」や「緞子(どんす)」といった紋織物で掛軸に仕立てたものが多く、大きさはお仏壇に合わせて幅広く売られています。一般的には、本尊・脇侍の掛軸が「金襴」で表装された場合はバランスを見て法名軸は「緞子」のものを選んだ方が好ましいとされています。
・金襴
模様部分、もしくは地全体に金箔や金糸を使用して織り上げた紋織物。
・緞子
経糸と緯糸をそれぞれ異なる色で織り上げたボリュームと光沢のある紋織物。金襴同様に高級織物として知られています。また、宗派によって柄が異なり、たとえば「小ちぎり」、「雲桐」、「矢菱牡丹」、「大谷牡丹」などがあります。
●法名軸のお手入れ
ご両親や直近に亡くなった故人を記した法名軸は比較的新しいため、傷みはほぼないと思われます。一族の法名を合わせた「総法名軸」は古くから伝えられるものですので、汚れたり、表紙が色褪せているものも多いでしょう。
その場合は専門の仏壇店に依頼し、法名が書いてある本紙はそのままに、しみ抜きや補色などの修復を依頼することをお勧めします。
●過去帳について
過去帳とは、その家々の故人名前(俗名)、戒名(または法名)、没年月日、死亡年齢などを記した、各家庭に伝わる系譜(帳面)です。浄土真宗では位牌を祀らず、過去帳をお仏壇に供えることが本式とされています。形は、時代劇によく登場しそうな横長の紙を一定間隔で畳んだものや縦に綴じられた和本があります。
一般的に帳面というと紙に記載することを想像しますが、過去帳の場合は、布や木(唐木の黒壇や紫壇など)で書かれている場合があります。紙が簡単に手に入らなかった時代からの名残であることが感じられます。でしょう。
●過去帳の注意点
過去帳の注意点として、ただの帳面ではない、ということです。位牌のかわりとしても用いられるので、粗末に扱ってはならないものです。
ご先祖の位牌が多くなりすぎて、繰り出し位牌を用いても仏壇に入りきらないような場合は、三十三回忌や五十回忌のときなどに、過去帳にまとめるのがよいとされています。
また過去帳は、通常、過去帳台の引き出しにしまっておくことできます。ただし、月命日などは、仏壇の見台に飾っておくのが一般的です。
●過去帳は誰が記入するか
過去帳は菩提寺の住職に書いていただくことが一番よいとされていますが、各ご家庭で故人と最も縁のある方が記入しても構いません。
鉛筆や筆ペンなどで書く方もいるかと思いますが、なるべく硯をすって墨で書き残すのが最良です。数十年以上墨の字は残り、後々の世代へ伝わっていきます。故人の命日、戒名、俗名、享年。続柄などを細かく記載し、各家庭の系譜を未来の世代のために記録していきましょう。
●まとめ
浄土真宗における法名軸や位牌は、位牌の代わりとして故人を供養するための大切な仏具です。四十九日法要までに用意し、仏壇に飾ることで故人を偲び、追悼の気持ちを表します。
ページ公開日: 2025-06-09
ページ更新日: 2025-09-08