戒名と法名について

戒名や法名は、どちらも仏弟子になる際に授けられる名前です。授けられるときは戒名も法名も同じですが、授けてもらう目的が異なります。

多くの宗派で使われているのは戒名です。しかし、浄土真宗に関しては法名、日蓮宗では法号を使います。単純に宗派による呼び方の違いではないことを覚えておきましょう。現在では、亡くなったときに授けられることが多くなっていますが、仏教が日本に伝わったころは生前に与えていたといわれています。

戒名と法名の大きな違いは、教えの違いによるものです。仏教では、単に教えを学ぶだけではなく、教えのとおりの実践が求められます。仏教徒のなかには、修行を行って悟りを開く努力をすることを求めている宗派もあります。こうした教えや修行に関しての考え方の違いが戒名、法名の違いにも表れているといえるでしょう。

●戒名の本来の意味

戒名は、仏教の厳格な戒律を守って修行を行うための証として受ける名前です。大乗仏教や上座部仏教の両方で行われているもので、通常は師僧が出家した人に対して与えます。

仏教には、「戒律」と呼ぶ修行者の生活規律があり、すべての修行者は常に戒律を守らなければなりません。戒律とは、自発的に規律を守りたい心の表れを意味する「戒」と、信条や規則を指す「律」を組み合わせています。

仏教の戒律は、人々から非難を受ける行いや悪事を働く行いを禁じており、戒律を守らなければ地獄に落ちると教えている厳しい規範です。戒名を受けるのはとても重要であるとみなしています。

●法名の本来の意味

法名は、修行ではなく生活のなかで阿弥陀仏の教えを聞いて守る人に授けられます。法名を授ける浄土真宗の元来の教えは、厳しい戒律を守って修行できない人が阿弥陀如来の働きによって救われて仏となるものです。

浄土真宗には、戒律がないので受戒が存在しません。受戒の代わりとして、仏法をよりどころとして生活する証として法名を授けられます。門徒となるために髪を剃り、仏教徒として生きる誓いを立てるものです。

法名は亡くなってから授かるものではなく、生きているあいだに授かります。阿弥陀仏の教えを守りながら生きていくことを誓うものであるためです。

●戒名・法名の構成

戒名や法名を付けるときには、一定のルールがあります。ランクや宗派によってもルールは変わるので注意しましょう。

基本的な構成は、「院号」、「道号」、「戒名」、「位号」の順番です。すべて漢字のみで構成しています。また、社会に対してどれほどよい行いをしたのかによっても、付ける名称が変わるので注意が必要です。

●院号

院号は、最初の部分に付ける号です。元来は邸宅や寺院に関係しており、天皇が退位したときに住んでいた邸宅を「○○院」と呼んでいました。戒名を付けはじめた頃は、天皇のみが使っていましたが、時代の変化とともに公家や将軍なども使用していた歴史があります。

現在では、社会に貢献した人や社会的地位の高い人、信仰心の厚い人や寺院への多額の寄付を行った人に与えているものです。

●道号

道号は院号の下に付けます。もともと道号とは、禅宗の僧侶が人里離れたところで修行した場所に由来する名前です。

道号は、僧侶のほかにも書道や茶道、華道や俳人に対しても使えます。家名や雅号、亡くなった人の趣味や性格、生前使っていたペンネームなども、道号として使用することが可能です。道号には、「天」や「地」「山」「川」などの実字を用いるのが決まりです。

●戒名(法号)

亡くなった人に授ける名前を戒名と呼ぶのが通常です。ただし、元来は構成の一部であり全体を指しているわけではないので気をつけましょう。なお、日蓮宗では法号、浄土真宗では法名の名称を用いますが、基本的な意味は同じです。

戒名は道号の下に付けます。生前に受けるのも可能で、その際に付ける戒名に関しては「逆修戒名」や「生前戒名」と呼ぶので覚えておきましょう。ほとんどの方は、戒名の2文字のうちの1文字に俗名を付けます。さらに、先祖代々から伝わる漢字や、尊敬する人からもらう漢字などの「通字」も可能です。

●位号

位号とは、最後の部分を構成している部分です。手紙を書いたり、メールをしたりするときには、名前の後ろに「様」を使うのではないでしょうか。同様に、戒名に関しても最後の「様」にあたる部分に変わる言葉として、位号を使います。

位号は、「様」のようにすべてが同じではありません。仏教では、寺に対してどれだけの貢献をしたのかを重視します。それによって位号が異なってくるので気をつけましょう。

●戒名の位号を見れば仏教徒の階級が分かる

仏教では、人類はみな平等の教えを説いていますが、戒名に関しては階級付けが行われており位号に反映されております。

位号の階級は大きくわけて5つです。

男性と女性によって位号の名称が異なります。

●男性の最高階級は大居士

男性の位号は、階級が高い順に以下のとおりです。

・大居士

・居士

・禅定門

・清信士

・信士

居士とは、出家をせずに家庭で修行を続ける仏教徒を指します。家に居る士から名前が付いたのが由来です。大居士に関しては一般の仏教徒とは異なり、仏教に関する高いスキルをもっていることを意味します。

●女性の最高階級は清大姉

女性の位号は、階級の高い順に以下のとおりです。

・清大姉

・大姉

・禅定尼

・清信女

・信女

大姉は男性の居士の地位にあたります。

居士は人を導く存在の意味をもつ大士を用いており、大士に対して大姉を用いました。大姉は信女の上にあたる階級で、主に在家信者に付ける名称です。大姉のなかでも清大姉が最高階級となっています。

●まとめ

このように戒名や法名を見ると故人様がどのような性格だったか、どのような仕事や趣味をお待ちだったかが想像することができます。

機会があれば古いご先祖様のお位牌をご覧になり、どのような方だったのか想像してみてはいかがでしょう

ページ公開日: 2025-03-18 
ページ更新日: 2025-04-02